面白かった進研ゼミ漫画の感想を書きます。
今回からスキャナーで取り込んでいるので見易くなっているかと思いますが全ページ自炊するのは面倒臭いので無理でした。
どーじんぐ娘を運営するには無職になる必要がある。
今回引いたのは中三向け「03D407-C」
03なので3年生向け。
DはDAWNのD(ワンピース考察本)。
407の下一桁は7なので締め切りは7月。
Cは不明です。
この漫画の魅力は
・魅力的なキャラと演出
です。
前回も前々回もキャラと演出しか魅力を挙げられていない点からお分かりの通り語彙に限界が訪れている為早速1つずつ感想を書いていきます。
【つかみ】
つかみには「無難」と「挑戦」の二種類があり、フックのない無難なつかみの漫画はその後も目立つ要素が無い凡百なアーキタイプになってしまいがちな事は以前記載した通りです。
今回の漫画については、内容だけ注目してみると「サッカー部の主人公がコーナーキックを失敗する」という一見無難な構成を取っています。
ですがこれを無難の一言で片づけてしまうのは非常に贅沢な話。
アーキタイプはもっと見応えが無いんです。
いくつか比較できる作品を引っ張ってきました。
擁護するとこれはアーキタイプが特別つまらない訳ではなく、どんな作品でも部活の描写は大体こんな感じです。
以上を見てからもう一度本作を読んでみると
一コマ目でボール、足元、太陽を描写し空間を広く見せ、斜めに配置したコマに効果線を使ってスピード感を出しています。
吹き出しの位置も視線の流れに沿って配置され自然に読む事ができる。
この視線誘導というテクニックは何だか大事なことらしく、ジャンプを読んでいると漫画と漫画の間の謎ページに編集部からのアドバイスとして記載されているのをよく見かけます。
読者にも少年じゃないのに少年ジャンプ見ない方がいいですよってアドバイスしてあげて下さい。
遠景→主人公アップでメリハリをつけて
蹴りこむ主人公を2つのカメラで撮り、外れたボールの先には主人公の顔と名前。
と同時にボールが支柱に当たりシュートが外れた描写も頭に入ってくる。コマとコマの間は吹き出しやオノマトペで繋がっており連続感があります。
試合のスピード感と主人公の調子の良い性格をスッと頭に入れようとする職人魂を感じる。
単純な部活シーンでも作者によって力量や気合の差が分かるという比較でした。何度も言いますがつかみが良いと冒頭3ページで既に没入感が出るんですね。
ここでアーキタイプの復習です。
【本編】
本編でも光る演出が続きます。
4・5ページ 三者面談
このシーン、その手があったかという感じです。
アーキタイプでは通常、主人公が成績を指摘された際いくつかの反応パターンがあり皆さんご存じの通り大抵は以下のように分類できます。
①友人からの指摘→怒る、落ち込む、誤魔化す
②親からの指摘→怒る、悩む
③教師からの指摘→落ち込む
いずれにせよどういった反応をするかで主人公の人間味が判別できるのですが、本作では三者面談という②と③が融合したシチュエーションにおいて「怒りかけるけど耐えてギャグ描写で誤魔化す」という特殊な反応を示しました。
テストの点数の低さを教師のセリフ一つで片付けるのもスピード感があってグッドです。ノルマであるテスト返却シーンはゼミ漫画の代名詞となりすぎて最早国民の誰にも響かないためこれを切り捨てたのは素晴らしい判断だと思います。
三者面談という状況はゼミ漫画でも珍しいものではありませんが、アーキタイプにありがちな私の点数低すぎシーンを回避しつつこうした感情豊かな描写をすることでキャラクターに個性が出てきます。
※成績の話に無関心な主人公が部活の実力を指摘された時は感情的になる点も主人公の性格を表現する良い手法だと思います。
6・7ページ 落ちこむ場面
まず土手という今時ベタすぎて誰も選択しない場所をチョイスした原作に拍手👏
このシーン、地味ですけどカメラが上下左右から撮られてて読んでて退屈しないようになってます。特に最後のコマの俯瞰視点は画力の成せる技である。
9(7)ページ 塾に通う友達を発見する場面
ちなみにページ数がズレてますがゼミ漫画にはよくある事です。激務なのでまともに校正をしてないのでしょう。
※これ以降ページ数は実際の表記に従います。
主人公を直前のギャグ顔から神妙な面持ちに変化させコマを徐々に小さくし構図をズームアウトさせることでモノローグが無くとも自分だけ周囲から取り残されている感覚を演出できていると信じてます。キューブリックさん見ていてくれ。
ちなみにアーキタイプな漫画はモノローグで心情をいちいち語ります。
平均的な中学生の読解力がどの程度なのか不明なのでどちらが正解かは分かりませんが以前飲み屋で話したオバ=サンの中には『羊たちの沈黙』の展開がよく分からなかったとかいう人もいたのでそういう方々への配慮は必要かもしれません。
10ページ ヒロイン登場
ハイ可愛い。一発でガチ恋勢になりました。理由としては
①無愛想でクールな語調のオタク臭い造形のキャラが
②クラスメートという設定で
③大人気漫画ONE PIECEをリスペクトしながら登場した
からです。
①については以下の記事でも書きましたが
say4.hatenablog.jp
まずDM漫画の原作をやれと言われてオタクみたいなキャラ造形を引っ提げ上司に確認を取るのは非常に勇気が必要な行動です。
貴方は陽キャ寄りの同僚や先パイが見守る中「いやだ ごめんなさい 私ったら」と謝るキャラクターを上司に提出できますか?
大抵の人は難しいと思います。かくして一般的な作品では活発な性格のアーキタイプなヒロインや友人、先パイが竿役の背中を押すべく登場する訳ですが
この漫画の原作担当者は恐らく周囲の目を気にしないお発達のオタク、もしくはある程度権力を持ち漫画に理解のあるオッサンである事が考察できる。
たった一言のセリフで原作者がガッツをアピールしており非常に好感が持てます。
②についても矢沢紅葉と同様です。
幼馴染や小中からの同級生だと既に人間関係が出来上がってるんですね。
話を作るのが楽なのかもしれませんが現状6くらいの関係値が8くらいになるだけの物語は面白くない。0から5の方がよっぽど面白いと思います。
人間関係に十分な尺を取る事ができる商業誌と違い宣伝とストーリーに40ページ弱しか与えられないDM漫画という媒体にアジャストした結果だと思いますがそこは挑戦してほしいです。
最初から人間関係の出来上がっていた毛利蘭より途中参戦した灰原の方が人気なのもそういう理由ですかね。申し訳ございませんでした。
③については記載した通りです。
漫画に理解のある原作者という考察は正しい事が証明されました。
以上3点。
あと3段アイスが全てチョコミントという異常性も個人的には評価対象です。
勿論こうしたキャラクターというのは商業誌では死ぬほど登場していますが進研ゼミの漫画というフィールドにおいては強烈な個性を放つものである事がご理解頂けたでしょうか。ガッツのあるキャラを生み出せる原作者は展開や演出にもガッツを入れるはず。
そう信じて読み進めていきます。
12~20ページ
宣伝が続くので一部割愛します(大炎上)
21ページ~
作者お得意 部活のシーンです。
ここ、英語セリフの意味するところが分からないですけど取り敢えず主人公の蹴ったボールの先にある太陽がヒロインの自宅から見える太陽とリンクする演出がエモいです。
英語については単にリスニングの勉強中とかそういう事ですかね。
※海外にいるとかそういう伏線では無いです。
続き 2点ビハインド
コマ割りをぶち抜く構図、コマを跨ぐ吹き出し、効果線やカットインを活用した躍動感ある演出、スラムダンクのあれみたいな顔のコマ、見応えがあります。
続きです。
いやベタだけどいい演出だ(ぺこぱ)。
ドラマ版ライアーゲームの最終回で松田翔太が笑った時の様なカタルシスがある。
試合についても、主人公が練習し続けてきたコーナーキックは決まったものの1点差で負けてしまったという結果を得点板の1コマとキャラの雰囲気で表現しています。
これがアーキタイプだとシュートが決まるシーンを直接描写し進研ゼミはこんなにも凄いんだぞと押しつけがましいアピールをしてくる。
表現が難しいですが、アーキタイプが直接感情に訴えかける浅い感動なのに対し本作は読者に行間を想像させることで余韻だか深みだかを出している気がします。
AVで抜きすぎたら一周回ってグラドルのイメージビデオの方が抜けるようになるのと同じです。
ロッキー3だって最後アポロとの試合結果を映さず開始のゴングで物語を締めたからこそ名作扱いされていますからね。
続き
二人が仲良くなっていく過程をしっかりと描写しています。
冷静に考えるとアイスぶち撒けられてから10日間特に会話は無かったんですけどサッカーをプレーする姿を見ると女性はビシャビシャになるという話を聞いたことがあるので多分その類の現象です。
まあ西野つかさも結構前から真中の事が気になってましたみたいな描写が後付けされてたし天下のジャンプすらそうなのでこの辺は脳内補完しときます。
どうでもいいですけど陰キャは体育のサッカーでDFをやりますよね。
28~33ページ 宣伝パートが続く
宣伝パートが苦痛という方は29ページ上部のこれに注目しておいて下さい。
この一連のシーンの違和感に気付きましたでしょうか。
31ページ冒頭でサラッと「期末テストも終了」と書いてあります。
通常であれば見開き・大コマ等で「進研ゼミでやったところだ!」というクソつまらんお約束が挿入されるところですが、そんな読者の「もういいよ」を悟ったかのように2回のテスト描写を一瞬で終わらせる展開にしています。
こんなのに1ページ割くくらいならストーリー進めるわという原作者の声が聞こえます。転職が決まっててどうでもよくなってたんですかね。
【ラスト】
そしてラスト、名作を名作たらしめる重要なパートです。
畳み方を間違えるとBLEACHになる。
オナニーマスター黒沢のエピローグで須川に言われたやつ
オナニーマスター黒沢のエピローグで須川に言われたやつですねこれは。
無茶苦茶エモいです。
チケットを所持しているところも同じです。
オナニーマスター黒沢は何歳で読んだかで大きく印象が変わる作品だと思いますがこの作品が今も私の記憶に強く残っているのは中学生の一番ぶっ刺さる時期に読んだことが理由だと思います。
現在は書籍化されたこともあり気軽に読む事はできませんがそんな時代の中学生達にもオナマスのエモさを伝えようとする原作者のガッツを感じました。
ちなみに最終ページはこれ
進研ゼミの漫画は配布時期が記載されてないので締切日から推測するしかありませんが、7月31日が土曜日なのは2004年、2010年のいずれかです。
しかしオナニーマスター黒沢がWebで連載していたのが2007年という点から、この漫画は2010年に配布されたという事が証明できる。
【その他】
- ヒロインの進路について
最後まで言及がありませんでした。でも実際リアルで良いと思います。
何だか気になるけど別にそんな話さない女子の進路って特に訊かなくないですか?
よく読むと分かりますが竿役とヒロインが会話したのはアイスの日と試合の日だけなんですね。アーキタイプなら同じ高校に通うだの何だの言い出すところですが上手く抑えてます。
個人的には34ページ合格発表のコマにいないので別々の進路に進んだと思います😢
【まとめ】
上述の通り本作は「つかみ」「キャラ」「演出」「ラスト」と前回までに挙げた条件を全て満たすれっきとした名作です。
無難なストーリーに多種多様な工夫を加えることで国民の認識の隙間を縫いベネッセの情報を脳内に流し込む素晴らしい内容だと思います。
この作者先生マジで好きなんですけど4年前くらいから霊圧が消えてしまった。
それに伴いDM漫画全体の平均レベルが低くなった気がするがそもそもベネッセは独身異常男性を対象としていないし低いのは私の頭脳レベルです。
ワイルドスピードが大好きで申し訳ございませんでした。
あと同じ作者の初期作品と思われる漫画を発掘しました。
絵柄が全然違いますが髪の塗り、オノマトペの書き方や吹き出しを蛍光ペンで縁取る謎の丁寧な画風が同一人物説の根拠です。
締切は7/15(土)となっているので2000年又は2006年頃に配布された可能性が高い。
最後になりますが締切が7月の漫画というのは夏休み期間が対象という事もあり夏休み・夏祭りといった年中行事のシーンが挿入されエモいストーリーになる漫画が多く、以前紹介した花火のシーンが印象的なこちらの作品も7月締切でした。
say4.hatenablog.jp
だから何なんだという話ですが特にありません。
ぜひ飲み会の席で「7月締切のゼミ漫画には名作が多いらしいよ」と知識自慢をして嫌われて下さい。
早く飲み会ができるといいですね。
コロナに負けるな!ニッポン!
ここまで読んで頂きありがとうございました。