進研ゼミ漫画の感想(25D207G子)

当たりの進研ゼミ漫画の感想を書きます。

コツコツと集めてきた進研ゼミの漫画ですが、1150冊を突破しました。

これから偉そうに感想を書きますがこれだけ読めばエアプではないと思うので許して下さい。

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一山50冊です

数えて驚きだったのはこれだけあっても面白いのが30冊くらいしかないという点。

良回の割合がワンピースのアニメより低い。

今回ご紹介する漫画は「25D207G子」

25:下一桁が5なので5年生向け
207:下一桁が7なので7月締切
D:DAWNのD(ONE PIECE考察本)
G子:
youtu.be

この漫画の魅力は
卓越した構成力と演出

です。
詳細を以下でご紹介します。

つかみ

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まず印象的なのは「絵と作家名」です。

進研ゼミの漫画は絵で決まります。
と言えば語弊があり正確には「絵師」で決まると思ってます。

これについて絵の上手い下手というのはあまり関係がありません。

最も重要である「ガッツのある演出」

これをできる方とそうでない方がいらっしゃるという意味です。

絵が上手くても面白くないエアギアのような作品や適当でも面白いちびまる子ちゃんみたいな作品もあるし嘘喰いは途中から上手くなり内容もクソほど面白くなる。

大正コソコソ噂話
バキを絵で敬遠する人が嫌いだよ。

そのため基本的には絵で期待値を判断する事は良くないと思います。

が、進研ゼミ漫画の場合、実際に絵を描く人間は30人程度しかいないと思われるので読む前にある程度ハードルの位置を決める事ができる。

軽くご説明します。

【例】
ジェダイ(光の作家)
・丁寧の人

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当ブログで何回もご紹介している最もお気に入りの人。
絵が上手いのは勿論だが演出の手数が多くて印象に残る漫画が多い。
吹き出しの彩色や豊富な手書き文字がとにかく丁寧。

・ヘタウマの人

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「11D107-M」を筆頭に面白い作品が多い。
絵はそんなに上手くないが小ネタが多く好感が持てる。

・成田さん

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キャラデザが好み。
数多くのアーキタイプを生成するが稀に佳作を描き上げる。
女が男に発情する割合が高い。

シス(闇の作家)
・中杉達也の人

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手元に来ると最もガッカリする漫画家。
絵が下手だとは思わないがとにかく宣伝等のノルマだけを淡々とこなし内容が頭に入らない漫画を連発する。

・髪塗り人

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髪の塗りがごちゃついており目が滑る人。
内容が面白ければ別に構わないが印象的な作品がガチで一つもない。

・古い人

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絵柄が古い人。
古いだけなら気にしないが内容も手堅い作品しかない。
ギャグ顔が滑っている。

クローントルーパー(普通の作家)
・綾瀬ハヤトさん

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作品数はめちゃくちゃ多いが何一つ刺さらない。
が、どの作品も気合が入っており恐らく一切手抜きをしていない熱い人。
何故かここ数年で絵柄が変化した。

・上原ゆうさん

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「92D203-C」という飛び抜けた名作以外はアーキタイプを連発する。
がキャラの掛け合いや絵は悪くなく不快感は無い。

と、このように進研ゼミの漫画は作家により特徴が様々なので手元に届いた段階である程度内容を推測しトリアージする事が可能となります。

以上を前提に今回の漫画を見てみると
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まず作者名の記載があります。

「皐月しのぶ」さんという方の様ですが1150冊のストックにこの先生の絵は見当たりません。そのためこの漫画が手元に届いた段階では過度な期待や諦念を抱かず、フラットな目線で読む事ができる。

『シャイニング』とか『地獄の黙示録』とか滅茶苦茶つまらないのに監督の名前で過大評価されてる気がするのでフラットな目線は本当に重要だと思います。

フラットな目で見ると絵と塗りがかなり上手い。
とりあえずこの時点では期待が持てるビジュアルをしています。

ちなみに作者名については絵師の人が記載するしないを選択できるらしい。
性的なお母さんを描いてバズった人が言ってました。

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性的なお母さん

※この漫画、お母さん一本で跳ねてたけど中身はマジもんの虚無なのでいつかご紹介します。
※ちなみに皐月しのぶさんというのは『このはな奇譚』作者の同人時代のペンネームじゃねみたいな話をインターネッツの海で見かけたがまともなソースが見つからない。

問題はここからです。つかみの内容です。

つかみについては「無難」「挑戦」の2種類がある事を皆さんご存じ頂いていると思います。

つかみで挑戦していればいるほど展開にも期待が持てるようなことをこれまで散々説明してきましたが今回の漫画はご覧の通りめちゃめちゃ無難です。
ただ夏休みを楽しみにしてるだけ。

続く2、3ページ目も
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無難です。13日の金曜日Part2くらい無難。

ただ「ホタルの海伝説」という少しガッツのありそうな単語が飛び出したので、ここにワイルドスピード7冒頭でステイサムが歩き出すと同時に陽キャの音楽が流れだした時のような高揚感がある。

プライベートライアン』の様な序盤の鬼スゴ戦争シーンで期待させておきながら中だるみの酷い何なんだチョコボール映画も存在するのでつかみが面白ければ全て面白いというわけでもありません。

なので期待を捨てず読み進めていきます。

本編

つかみは無難なアーキタイプだったがこの辺から差別化されてくる。

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親父のタバコ!(千鳥ノブ)

父親が普通にタバコ吸ってて時代を感じる。

そして主人公の点数が出ない。
母親のセリフからあまり良くないことは推察されるがそれ以上の情報が無い。

アーキタイプでお馴染みの「私の点数低すぎ……」というつまらんお約束(ノルマ)から少しズラした構成となっています。

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つまらんお約束

ズラしの意図は不明ですが恐らく点数を読者に開示すると
・周りの点数と比較して焦る
・教師がクラスを煽る

などの更なるくだらんお約束イベントが発生しページ数を消費してしまう為だと思います。

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くだらんお約束

部活に入っていればなおさらです。
「部活も上手くいかない」「友達が塾を始める」
この辺のお約束だけで4ページ以上消費します。

その点今回の漫画は部活にも入らず「テスト返却」「挫折」「進研ゼミ紹介」というお約束を先々の伏線を撒きつつ開始5ページで終わらせる珍しい構成です。

ハイテンポすぎるが多分原作を書いた社員は転職先が決まっている。

6~11ページ目(表記は4~9)
※以後は実際の表記に従います。
お約束開始
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絵が綺麗なだけで普通のお約束シーンですが暇人なので今回は全ページスキャンしました。どーじんぐ娘を運営して不労所得で生活するぞ!

10ページ~
満を持して竿役が登場。
これ背景の花全部手書きなんですかね?
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竿役が中盤で登場する構成が珍しいです。

また13ページ最後のコマで登場するつり橋の「ビュオオオオオ」という効果音が進研ゼミの漫画にあるまじきフォントをしており好感が持てます。

14~17ページ
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「登場人物との喧嘩」というお約束を消化します。

この辺りまでは構成にやや独創性はあるものの、話自体はアーキタイプです。
期待の持てる序盤からやや地味な展開が続くのは『カンフーハッスル』と同じ。

というか婆さんの手伝いは普通にサボるだろ。

18ページ~
ここから怒涛の熱き展開が始動する。
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ホタルの特徴を竿役への謝罪のキッカケと絡めました。
見た目がキモくても良いところがあるみたいな婆さんの台詞が泣ける。
僕だって見た目はキモいけど旧発狂七段のAutumnBreezeだけは得意ですからね。

そして
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ここに来て13ページで登場したイカついフォントのつり橋が再登場します。

続きです。
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い~や見開き!(東京ホテイソン)

見開きでエモい演出が入りました。
これが序盤から繰り返し登場していた「ホタルの海」なんですね。
素晴らしい。

単語だけ繰り返し登場して読者のハードルが上がった銃の悪魔の演出をキッチリ印象的に仕上げてきたチェンソーマンと同じ。

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犠牲者の名前と共に登場する素晴らしい演出

見開き演出のある進研ゼミ漫画はたま~にあるんですがどれも製作者のガッツを感じるので内容はともかく一定の評価は絶対にされて良いと思います。
ただし乱発しまくると中山敦支の漫画みたいになってハイハイという感じになる。

「ギィー」とか「ゴオォォ」の効果音も販促漫画にあるまじきフォントで素晴らしい。

ガッツのある展開は続きます。
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①序盤で妙に印象的だった両親の出会った場所であることが判明。
②同時に主人公の「ヒカル」という名前がホタル由来である事も判明。
③恐怖を乗り越えて一回り成長した主人公を見て婆さんが開眼。

この2ページだけで3つのドラマを展開します。

今考えれば父親が室内でタバコを吸うのも母親が妙に若いのも、このエピソードを読者に印象付ける為に数コマでキャラ立ちさせる必要があったからかもしれません。

また、婆さんが開眼することで「主人公の成長」というお約束描写を印象的に仕上げてます。

「大きくなったねぇ…ヒカル」という婆さんの台詞についても主人公の名前がホタルの光にあやかって付けられたというエモエピソードを直前に挿入することで「ヒカル」という名前に意味を与え、我々読者の印象点を大きく上げる働きをしています。

成長したのは「販促漫画に登場する記号的なキャラ」ではなく「ヒカル」だと。
名付けエピソードの挿入でキャラに命が吹き込まれています。

アーキタイプなら適当に「あいつ変わったな」みたいなお約束が脈絡無く挟まれて適当に1コマで終わり。
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ここの演出だけ比較しても今作は読者の視線を
「10年以上も前になるんだねえ」→婆さんの顔→主人公のミドルショット→「大きくなったねぇ」
と誘導し没入感を上げておりアーキタイプに格の違いを見せつけている。

28ページ~
夏が終わります。
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健気な竿役が抜ける。
これ26ページで「東京に帰るとホタルが見られない」という主人公の発言を受けての行動なんですよね。

アーキタイプだとその場でホタル捕まえたり「来年も来いよ」とか言って終わりそうなものですが間を挟む事で竿役が頭を使って主人公のために行動したことが表現されてます。

ただしこの辺りについてはホタルの海に行く時点で既にアーキタイプから大きく離れているので他漫画との比較はできません。

ラスト

思い出したかのように進研ゼミの宣伝をする。
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そして
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素晴らしいです。
無難にまとめ上げましたがエモい演出の後なのでこれくらいあっさりで問題ありません。来年以降の関係に期待が持てる終わり方です。

ナッちゃんが1個上なので先に中学生になって不良の先パイに調教されて陸君を逆レイプしてヒカルさんの脳が破壊される展開が良いかもしれないですね。

最終ページはこれです。

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いや電話番号が長すぎるだろ

7月31日が水曜日なのは1996年、2002年、2013年のいずれかです。
96年は古すぎるしWHOのたばこ規制枠組条約が日本で批准されたのが2004年らしいので父親が普通にタバコを吸う本作は2002年の物と思われます。

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ちなみに0070-800はKDDI前身の日本高速通信が94年~2010年まで提供してたフリーダイヤルらしいので2013年の可能性はありません。
というか2013年はビビットレッドオペレーションとかが放映してた超近代なので本作の牧歌的な作風とマッチしない。

まとめ

本作は「つかみ」「ラスト」こそ無難ですが、主人公や竿役だけでなくタバコを吸う父親や開眼する婆さんなど血の通った「キャラ」に加え美麗な絵に裏打ちされた飛び抜けた「演出」とホタルの海を軸に主人公の名前や両親の馴れ初めをエッセンスにした高い構成力で、唯一無二の名作に仕上がっています。

ただ、ひと夏の経験を経て成長する主人公の物語としては素晴らしいんですが成長のきっかけとなったのが「竿役との喧嘩」「つり橋の克服」「ホタルの気付き」と、肝心の進研ゼミが一切関わっていない。

本作における進研ゼミという概念は、主人公の「ゼミなら勉強も遊びも思い通りにできそう」という両親へのフワっとした説得の根拠として登場し「婆さんの家に今年も行く事を可能にした」という重要ながら非常に地味な役割しか与えられていません。

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本作は38ページありますが進研ゼミと関係のないホタルのエピソードはその内12ページ以上を占めておりページ数だけで見ても宣伝漫画としては異質な構成であることが分かります。

2ページも使って進研ゼミの宣伝に終始した綾瀬ハヤトさんの勇姿を見よ!
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宣伝漫画としてはこちらの方が正しい姿かもしれません。

本作「25D207G子」のような特質系の作品が生まれた経緯は不明ですが、当時の状況を再現することでさらに多くの名作が期待できると思うのでベネッセの方はどんどん転職活動をして進研ゼミの宣伝をしない宣伝漫画を制作してください。

ちなみにベネッセの平均年収は930万円らしいので誰も転職しないと思います。

ここまで読んで頂きありがとうございました。